2021年1月1日、肺がんのため京都市内の自宅で亡くなった俳優・福本清三さん。生涯で「5万回切られた男」と呼ばれた福本さんは、時代劇を支え続けた日本一の切られ役として、多くの俳優や制作陣から絶大な信頼を集めていました。1943年、兵庫県で6人兄弟の三男として生まれた福本さん。幼い頃は勉強よりも働くことを考えていたといい、縁を頼って東映京都撮影所へ入社したことが俳優人生の始まりでした。当時は大部屋俳優として、斬られる役や脇役を数多く演じ、20代後半からは切られ役専門の道へ進みます。しかし、その華やかな舞台裏には厳しい現実がありました。若い頃の福本さんは生活が苦しく、結婚後も借金を抱えるほどの貧しい暮らしを経験。妻・雅子さんとの新婚生活は、布団一組と茶碗一個から始まり、みかん箱を机代わりに使うほどだったといわれています。それでも福本さんは役者の道を諦めませんでした。時代劇の殺陣やスタントで地道に経験を積み、東映スターたちに斬られる姿で存在感を高めていきました。2003年には映画『ラスト サムライ』に出演。寡黙な侍役で世界の観客に強烈な印象を残し、長年培った「斬られる演技」が海外でも評価されました。さらに2014年公開の『太秦ライムライト』では、70歳を超えて初主演を務め、国際映画祭で主演男優賞を受賞。本人も「自分が主役になるなんてあり得ない」と何度も断ったほどの出来事でした。晩年、肺がんが見つかりながらも仕事を続け、最後の撮影は2020年8月末まで行っていました。撮影所を後にする際、福本さんは「わしゃスターじゃ」と冗談を言ったといいます。長年脇役として歩んできた男が、最後の瞬間まで役者としての誇りを持ち続けていた姿でした。