「日本にはまだ電卓がないの?」数学の授業中、教師アンダーソンのその言葉に教室中が爆笑した。留学生の美咲は俯き、何も言い返せなかった。クラスメートとは距離を置かれ、母の作ったお弁当をこっそり食べる日々。見えない壁に囲まれている美咲は、一人寂しさに耐えていた。その晩、自室に戻った美咲は布団に突っ伏し、涙をこぼす。目に入ったのは、祖父からもらった懐かしいそろばん。「そろばんは心を映す鏡だ」と語った祖父の言葉が蘇る。美咲は震える手でそろばんを取り出し、幼い頃の記憶を辿るように弾き始めた。「泣いてちゃ駄目だ」と決意を胸に、彼女はそっと微笑んだ。そして迎えた数学のテスト。一人電卓を使わず、空中で指を動かし計算を進める美咲の姿に、クラスがざわめく。「終わりました」と美咲が答案を提出すると、教師も生徒たちも驚愕した。全問正解。その上、美咲は難問も即座に解き明かしたのだ。