2017年6月13日、野際陽子さんは家族に見守られながら81歳で静かに息を引き取りました。その2年間、彼女は肺がんを患いながらも公にはせず、女優として完璧に立ち続けました。その歩みは、「私はまだ大丈夫」という言葉に象徴されています。彼女の人生にはもうひとつの沈黙がありました。それは、1994年に夫・千葉真一さんとの別れから続いた23年間。結婚生活でも、自分の理想と家族への愛を優先し続けた野際さん。その後も再婚せず、自らの信念を貫き生き抜いてきました。彼女が選んだ「強く静かな沈黙」は、幼いころ母が見せた生き方の影響によるものでした。戦争や別れ、悲しみを経ても弱さを決して見せなかった彼女の姿。それはそのまま昭和を映す鏡のようです。その最後の舞台で、彼女はどこか穏やかに微笑んでいたのかもしれません。その姿を忘れない多くの人々の心に、いまでも彼女の光がとどまっています。