「こんなものに35億も使うなんて、村長は正気じゃない!」昭和時代、岩手県のある村で、村民たちにそう罵倒された巨大な水門がありました。高さ15.5メートル、総工費35億円。防災目的とはいえ、それに想像もつかない額の税金を投入すると発表されるやいなや、村中が村長に反発しました。「津波?いつ来るかわからない災害にこんな大金をかけるなんて大バカだ」との声が渦巻く中、村長は毅然とした態度を崩しませんでした。「過去の悲劇を絶対に繰り返さない」と固い信念で突き進み、12年という歳月をかけて完成した巨大水門。しかし、その村長が亡くなった後、施設は30年もの間“無駄な壁”として扱われてきました。ところが2011年、東日本大震災が発生。村に押し寄せる巨大津波――その時、馬鹿にされていた水門が奇跡を起こします。激しい波を完全にせき止め、村の中心部は一切の被害を受けなかったのです。周囲の町が壊滅的な打撃を受ける中、この村の村民すべてが助かったのは、その「無駄」と笑われていた水門のおかげでした。