母親として笑っていなきゃ――そう自分に言い聞かせ、鬱の苦しみを隠し続けてきた美鈴。幼い息子・朝日のために、毎日明るく振る舞い、どんな暴言にも耐えてきた。だが中学生になった朝日は反抗期に入り、「専業主婦のくせに」「さっさと消えろよ」と心ない言葉をぶつけるようになる。「お母さんが本当にこの世から消えたらどうするの?」震える声で問いかけても、朝日は「別にいいけど」と吐き捨てた。その瞬間、美鈴の中で張り詰めていた糸が切れた。家を飛び出した彼女は事故に遭い、生死の境をさまようことになる。病院で初めて知った母の病気、不倫で母を追い詰めていた父の過去――朝日は自分がどれほど母を傷つけていたかを思い知る。退院後、家族はぎこちなくも再び向き合い始めるが、美鈴の心の傷は簡単には消えない。完璧な母親にも、完璧な家族にもなれなかった。それでも、不完全なまま支え合おうとする家族の再生を描いた物語である。